更衣(ころもがえ)

9月になりました。「更衣(ころもがえ)」の時期です。

9月になると「単衣」という着物を着るようになります。

「単衣」と書いて"ひとえ"と読みます。簡単にいうと裏地のついていない仕立てをした着物です。

着物は、季節によってその仕立て方を変えます。

現代は、「袷(あわせ)」「単衣(ひとえ)」「薄物(うすもの)」と大きく分けて3つになります。

江戸時代は、もっと細かく「綿入れ」とか「口綿(くちわた)」といった分け方をしていたそうです。(口綿とは、袷の着物の裾部分などに綿が入っていて膨らんでいるのを時代劇などでみたこともあると思いますが、そのような仕立てのことです。)

つまり、盛夏を除いた季節を一枚の着物を仕立て方を変えることで、寒さを防いで着まわすことができたらしいのです。余談ですが、「四月一日」さんという姓があります。「わたぬき」さんと読みますが、4月1日に綿入れ仕立ての着物から、綿を抜いて仕立直したことからそのように読むそうです。この話を聞いた時、昔は当たり前ですが着物が日常の中にあり、人々の生活の中に溶け込んでいたのだなと改めて感じました。

"単衣"のことに戻りますが、今年は気候としては楽な衣替えになりました。

8月の末から突然秋のような気温になったからです。

例年ですと、9月になっても30度を越す気温の日が続いていることが多くて困るのです。

7月8月の盛夏には、薄物という透けた生地の着物を着ます。つまり、8月31日は薄物を着ますが、9月1日になると単衣を着るというのが基本的な習慣なのです。実際には、9月1日になったからといって、それまで続いていた夏の暑さが一気に秋らしい気温になる訳でもありません。地球温暖化の現在では、さすがに暑いので九月の1週目辺りまでは夏の盛夏の着物でいいという方もいらっしゃいますが、約束事を大切にする気持ちもあるため、非常に悩ましい季節となるのです。

個人的には、暦ではなく、気温28度ぐらいまでは薄物でも9月に着てヨシということにしてほしいのですが。

でも、9月に単衣を着て外を歩いている時、暑いことは暑いのですが、すっと袖に絡む風が真夏に比べてかなり涼しくなっていて、秋を感じることがあります。そんな時、着物は、やはり生活に根ざした衣装なのだなと思うのです。